そのために解析は必要? 未加工の生データこそ宝?
往々にして複雑過ぎ、情報多すぎ、そのままでは手に負えない
print(ggplot2::diamonds)
carat cut color clarity depth table price x y z
<dbl> <ord> <ord> <ord> <dbl> <dbl> <int> <dbl> <dbl> <dbl>
1 0.23 Ideal E SI2 61.5 55 326 3.95 3.98 2.43
2 0.21 Premium E SI1 59.8 61 326 3.89 3.84 2.31
3 0.23 Good E VS1 56.9 65 327 4.05 4.07 2.31
4 0.29 Premium I VS2 62.4 58 334 4.20 4.23 2.63
--
53937 0.72 Good D SI1 63.1 55 2757 5.69 5.75 3.61
53938 0.70 Very Good D SI1 62.8 60 2757 5.66 5.68 3.56
53939 0.86 Premium H SI2 61.0 58 2757 6.15 6.12 3.74
53940 0.75 Ideal D SI2 62.2 55 2757 5.83 5.87 3.64
ダイヤモンド53,940個について10項目の値を持つデータセット
各列の平均とか標準偏差とか:
stat carat depth table price x y z
<chr> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl>
1 mean 0.80 61.75 57.46 3932.80 5.73 5.73 3.54
2 sd 0.47 1.43 2.23 3989.44 1.12 1.14 0.71
3 max 5.01 79.00 95.00 18823.00 10.74 58.90 31.80
大きさ carat
と価格 price
の相関係数は 0.92 (かなり高い)。
生のままよりは把握しやすいかも。
しかし要注意…
情報をうまく絞って整理 → 直感的にわかる
carat
が大きいほど price
も高いらしい。
その度合いは clarity
によって異なるらしい。
データをうまくまとめ、それに基づいて推論するための手法。
「グラフを眺めてなんとなく分かる」以上の分析にはモデルが必要
対象システムを単純化・理想化して扱いやすくしたもの
データ生成をうまく真似できそうな仮定の数式表現。
データ生成をうまく真似できそうな仮定の数式表現。
e.g., 大きいほど高く売れる: $\text{price} = A \times \text{carat} + B + \epsilon$
新しく採れたダイヤモンドの価格予想とかにも使える。
このように「YをXの関数として表す」ようなモデルを回帰と呼ぶ。
単純な直線あてはめから出発し、ちょっとずつ統計モデリング。
でも統計モデリングはいわゆる“機械学習”とは違う気もする…?
項目 | 統計モデリング | 近年の機械学習 |
---|---|---|
例 | 一般化線形モデル 階層ベイズモデル |
ランダムフォレスト ニューラルネットワーク |
モデル構造 | 単純化したい | 性能のためなら複雑化 |
モデル解釈 | ここが強み | 難しい。重視しない。途上。 |
予測・生成 | うまくすれば頑健 | 主目的。強力。高精度 |
データ量 | 少なくてもそれなり | 大量に必要 |
計算量 | 場合による | 場合による |
久保先生の"緑本"こと
「データ解析のための統計モデリング入門」
をベースに回帰分析の概要を紹介。
回帰のキモは線ではなく分布。
Data Science Hill Climb 2021 (東京海上) での講義 (~6時間) の演習無し抜粋バージョン (~2時間 x 2回)。
Define a family of models: だいたいどんな形か、式をたてる
Generate a fitted model: データに合うようにパラメータを調整
なんとなく $y = a x + b$ でいい線が引けそう
なんとなく $y = a x + b$ でいい線が引けそう
じゃあ切片と傾き、どう決める?
回帰直線からの残差平方和(RSS)を最小化する。
ランダムに試してみて、上位のものを採用
グリッドサーチ: パラメータ空間の一定範囲内を均等に試す
こうした最適化の手法はいろいろあるけど、ここでは扱わない。
par_init = c(intercept = 0, slope = 0)
result = optim(par_init, fn = rss_weight, data = df_weight)
result$par
intercept slope
-50.54532 67.18659
上記コードは最適化一般の書き方。
回帰が目的なら次ページのようにするのが楽 →
lm()
で直線あてはめしてみるfit = lm(data = mpg, formula = hwy ~ displ)
broom::tidy(fit)
term estimate std.error statistic p.value
<chr> <dbl> <dbl> <dbl> <dbl>
1 (Intercept) 35.697651 0.7203676 49.55477 2.123519e-125
2 displ -3.530589 0.1945137 -18.15085 2.038974e-46
mpg_added = modelr::add_predictions(mpg, fit)
ggplot(mpg_added) + aes(displ, hwy) + geom_point() +
geom_line(aes(y = pred), size = 1, color = "#3366ff")
🔰 diamonds
などほかのデータでも lm()
を試してみよう。
線形モデル LM (単純な直線あてはめ)
↓ いろんな確率分布を扱いたい 👈 統計モデルの重要な部品
一般化線形モデル GLM
↓ 個体差などの変量効果を扱いたい
一般化線形混合モデル GLMM
↓ もっと自由なモデリングを!
階層ベイズモデル HBM
データ解析のための統計モデリング入門 久保拓弥 2012 より改変
発生する事象(値)と頻度の関係。
手元のデータを数えて作るのが経験分布
e.g., サイコロを12回投げた結果、学生1000人の身長
一方、少数のパラメータと数式で作るのが理論分布。
(こちらを単に「確率分布」と呼ぶことが多い印象)
$X \sim f(\theta)$
e.g.,
コインを3枚投げたうち表の出る枚数 $X$ は二項分布に従う。
$X \sim \text{Binomial}(n = 3, p = 0.5)$
一緒に実験してみよう。
コインを3枚投げたうち表の出た枚数 $X$
試行1: 表 裏 表 → $X = 2$
試行2: 裏 裏 裏 → $X = 0$
試行3: 表 裏 裏 → $X = 1$ 続けて $2, 1, 3, 0, 2, \ldots$
↓ サンプル
{2, 0, 1, 2, 1, 3, 0, 2, …}
これらはとてもよく似ているので
「コインをn枚投げたうち表の出る枚数は二項分布に従う」
みたいな言い方をする。逆に言うと
「二項分布とはn回試行のうちの成功回数を確率変数とする分布」
のように理解できる。
コイン3枚投げを繰り返して得たデータ {2, 0, 1, 2, 1, 3, 0, 2, …}
↓ たった2つのパラメータで記述。情報を圧縮。
$n = 3, p = 0.5$ の二項分布で説明・再現できるぞ
こういうふうに現象と対応した確率分布、ほかにもある?
同じ確率で起こるn通りの事象のうち実際に起こった事象X
e.g., コインの表裏、サイコロの出目1–6
🔰 一様分布になりそうな例を考えてみよう
成功率pの試行が初めて成功するまでの失敗回数X
e.g., コイントスで表が出るまでに何回裏が出るか
\[ \text{Prob}(X = k \mid p) = p (1 - p)^k \]
「初めて成功するまでの試行回数」とする定義もある。
🔰 幾何分布になりそうな例を考えてみよう
確率$p$で当たるクジを$n$回引いたうち当たった回数X。平均は$np$。
\[ \text{Prob}(X = k \mid n,~p) = \binom n k p^k (1 - p)^{n - k} \]
🔰 二項分布になりそうな例を考えてみよう
単位時間(空間)あたりに平均$\lambda$回発生する事象が実際に起きた回数X。
e.g., 1時間あたりのメッセージ受信件数、メッシュ区画内の生物個体数
\[ \text{Prob}(X = k \mid \lambda) = \frac {\lambda^k e^{-\lambda}} {k!} \]
二項分布の極限 $(\lambda = np;~n \to \infty;~p \to 0)$。
めったに起きないことを何回も試行するような感じ。
ポアソン過程の事象の発生間隔x。平均は $1 / \lambda$ 。
e.g., メッセージの受信間隔、道路沿いに落ちてる手袋の間隔
\[ \text{Prob}(x \mid \lambda) = \lambda e^{-\lambda x} \]
幾何分布の連続値版。
🔰 ポアソン分布・指数分布になりそうな例を考えてみよう
ポアソン過程の事象k回発生までの待ち時間x
e.g., メッセージを2つ受信するまでの待ち時間
\[ \text{Prob}(x \mid k,~\lambda) = \frac {\lambda^k x^{k - 1} e^{-\lambda x}} {\Gamma(k)} \]
指数分布をkのぶん右に膨らませた感じ。
shapeパラメータ $k = 1$ のとき指数分布と一致。
平均 $\mu$、標準偏差 $\sigma$ の美しい分布。よく登場する。
e.g., $\mu = 50, ~\sigma = 10$ (濃い灰色にデータの95%, 99%が含まれる):
\[ \text{Prob}(x \mid \mu,~\sigma) = \frac 1 {\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \exp \left(\frac {-(x - \mu)^2} {2\sigma^2} \right) \]
標本平均の反復(中心極限定理); e.g., 一様分布 [0, 100) から40サンプル
大きい$n$の二項分布
大きい$\lambda$のポアソン分布
平均値固定なら$k$が大きくなるほど左右対称に尖るガンマ分布
植物100個体から8個ずつ種子を取って植えたら全体で半分ちょい発芽。
親1個体あたりの生存数はn=8の二項分布になるはずだけど、
極端な値(全部死亡、全部生存)が多かった。
「それはなぜ?」と考えて要因を探るのも統計モデリングの仕事。
「普通はこれに従うはず」を理解してこそできる思考。
コンピューター上でランダムっぽい数値を出力する装置。
実際には決定論的に計算されているので、
シード(出発点)と呼び出し回数が同じなら出る数も同じになる。
set.seed(42)
runif(3L)
# 0.9148060 0.9370754 0.2861395
runif(3L)
# 0.8304476 0.6417455 0.5190959
set.seed(42)
runif(6L)
# 0.9148060 0.9370754 0.2861395 0.8304476 0.6417455 0.5190959
シードに適当な固定値を与えておくことで再現性を保てる。
ただし「このシードじゃないと良い結果が出ない」はダメ。
さまざまな「分布に従う」乱数を生成することもできる。
n = 100
x = sample.int(6, n, replace = TRUE)
x = runif(n, min = 0, max = 1)
x = rgeom(n, prob = 0.5)
x = rbinom(n, size = 3, prob = 0.5)
x = rpois(n, lambda = 10)
x = rnorm(n, mean = 50, sd = 10)
print(x)
p1 = ggplot(data.frame(x)) + aes(x)
p1 + geom_histogram() # for continuous values
p1 + geom_bar() # for discrete values
🔰 小さい n
から徐々に大きくして変化を確認しよう。
🔰 ほかのオプションもいろいろ変えて変化を確認しよう。
🔰 1%の当たりを狙って10連ガチャを回す人が100万人いたら、
全部はずれ、1つ当たり、2つ当たり… の人はどれくらいいるか?
ある植物を50個体調べて、それぞれの種子数Xを数えた。
カウントデータだからポアソン分布っぽい。
ポアソン分布のパラメータ $\lambda$ はどう決める?
ある植物を50個体調べて、それぞれの種子数Xを数えた。
カウントデータだからポアソン分布っぽい。
ポアソン分布のパラメータ $\lambda$ はどう決める?
(黒が観察データ。青がポアソン分布。よく重なるのは?)
尤もらしさ。 モデルのあてはまりの良さの尺度のひとつ。
あるモデル$M$の下でそのデータ$D$が観察される確率。
定義通り素直に書くと
$\text{Prob}(D \mid M)$
データ$D$を固定し、モデル$M$の関数とみなしたものが尤度関数:
$L(M \mid D)$
モデルの構造も固定してパラメータ$\theta$だけ動かす場合はこう書く:
$L(\theta \mid D)$ とか $L(\theta)$ とか
コインを5枚投げた結果 $D$: 表 4, 裏 1
表が出る確率 $p = 0.5$ と仮定:
表が出る確率 $p = 0.8$ と仮定:
$L(0.8 \mid D) > L(0.5 \mid D)$
$p = 0.8$ のほうがより尤もらしい。
ある植物が作った種子を数える。$n = 50$個体ぶん。
この中では $\lambda = 3$ がいいけど、より尤もらしい値を求めたい。
扱いやすい 対数尤度 (log likelihood) にしてから計算する。
一階微分が0になる $\lambda$ を求めると…この場合は標本平均と一致。
今回のデータは真の生成ルール“$X \sim \text{Poisson}(\lambda = 3.0)$”で作った。
「50個体サンプル→最尤推定」を1,000回繰り返してみると:
サンプルの取れ方によってはかなりズレた推定をしてしまう。
(標本データへのあてはまりはかなり良く見えるのに!)
“$X \sim \text{Poisson}(\lambda = 3.0)$”からnサンプル→最尤推定を1,000回繰り返す:
Q. じゃあどれくらいのサンプル数nを確保すればいいのか?
A. 推定したい統計量とか、許容できる誤差とかによる。
確率分布がいい感じに最尤推定できたとしても、
それはあくまでモデル。仮定。近似。
All models are wrong, but some are useful. — George E. P. Box
サイコロを10回振ったら6の目が3回出た。
6の目の出る確率が1/6だとした場合の尤度は?
6の目の出る確率が0.2だとした場合の尤度は?
横軸を6の目の出る確率、縦軸を対数尤度とするグラフを描こう。
このサイコロで6の目が出る確率を最尤推定しよう。
数学で解ければ優。Rで見つければ良。目分量・勘で可。
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