Rにやらせて楽しよう — データの可視化と下ごしらえ

岩嵜 航 (Watal M. Iwasaki, PhD)
東北大学 生命科学研究科 進化ゲノミクス分野 特任助教
(Graduate School of Life Sciences, Tohoku University)
  1. 入門1: データ解析の全体像。Rを使うメリット。Rの基本。
  2. 入門2: データ可視化の重要性と方法。
  3. データ構造の処理1: 抽出、集約など。
  4. データ構造の処理2: 結合、変形など。
  5. データ内容の処理: 数値、文字列、日時など。
  6. 統計モデリング基礎: 確率分布、尤度、一般化線形モデル
2021-09-13 北海道大学 生命科学院 特別講義 https://heavywatal.github.io/slides/hokudai2021r/

研究の基本プロセス

  1. 課題を見つける/仮説を立てる
  2. 実験🧫・観察🔬・インターネット🏄‍♀️でデータを集める
  3. データを整理する
  4. データを解析して仮説を検証する
  5. 結果を報告する

  • 実験や観察は研究の半分くらい!
  • 残り半分はデータの整理&解析!

科学の営み = 巨人の肩に立つ

https://en.wikipedia.org/wiki/
Standing_on_the_shoulders_of_giants

先人たちの積み重ねに基づいて、新しい発見をする

記録を残すことは何より重要
実験や野外観察では些細なことも漏らさず記録。
生データは何重にもバックアップ。
みんな結構できてる(はず)。
データ整理・解析・作図も不可欠、だけど…
再現不能の職人技で切り抜けちゃう人も多い。
コピペ、メニュー選択、配色と配置を微調整…
疑義が生じたら…? 別の人がその研究を発展させたいとき…?
💩「ありまぁす!」
✅「誰でも確実に再現できるプロトコルがこちらです」

Reproducible Research (再現可能な研究) が巨人を大きくする。

再現不可能な職人的研究の例

動物園の混合展示で、各種動物はどのように分布・行動しているか、
それらを決める要因は何か。膨大な観察データに基づく超大作卒論。

生データ: ここはまだそんなに悪くない

週に1回、各個体の位置と行動を種ごとのファイルに記録。
タブは個体、A列B列はXY座標でそれ以降の列は行動、各行はある時刻。

マウスとコピペを駆使して条件ごとに複製・集計

ちゃんと合ってるのかな… ファイルもタブもたくさん…

マウスとコピペを駆使して条件ごとに複製・集計

ちゃんと合ってるのかな… ファイルもタブもたくさん…

目と手で数え、濃淡を計算し、画像ソフトで塗る

泣きながら何十枚も…。無料期間が終わって今は使えない…。

目作業・手作業 = シーシュポスの岩

Punishment sisyph.jpg
https://en.wikipedia.org/wiki/Sisyphus
  • 膨大な単純作業がそもそもツラい
  • 人間だもの、ミスは防ぎきれない
  • ミスを減らすためのチェックもツラい
  • ミスを発見 → 初めからやり直し
  • 新データ追加 → 初めからやり直し
  • 熟練してもツラいまま
  • そのときの自分しかできない、記録に残らない
    検証のしようがない
  • 卒論なら努力賞でいいかもしれないけど、科学の手続きとしては問題。

プログラミングで大量のファイルを捌く

先の例に負けず生データはどっさり。でも頑張るのは機械。

Iwasaki, Kijima, Innan (2019)

こんな感じの図もRでラクラク描けるよ


Iwasaki and Innan (2017)

Rにやらせて楽しよう

  • 規則性のある退屈な仕事は人間よりも機械のほうが得意。
  • 一度書いたプログラムは、データが変わっても使いまわせる
  • 自分以外の人でも再現・検証できる
  • きれいな図を簡単に描ける
  • 部分的に改変しながらいろんな解析を試せる。
    仮説検証 だけでなく、 仮説生成(探索的データ解析) もやりやすい
  • やれば上達する。どんどん楽になる!
https://r4ds.had.co.nz/introduction.html

Rとは

統計解析と作図の機能が充実したプログラミング言語・環境

https://cran.r-project.org/
クロスプラットフォーム
Linux, Mac, Windows で動く
オープンソース
永久に無償で、すべての機能を使える。
集合知によって常に進化している。
コミュニティ
相談できる人や参考になるウェブサイトがたくさん見つかる。

他のプログラミング言語でもいいよ: PythonとかJuliaとか。

この集中講義の目標

再現可能な解析を楽にやりたい気持ちになる

⬜ データ解析の基本を身につける

  • 全体のおおまかな流れがわかる
  • 解析しやすいデータの形を知る

⬜ 必要な方法を調べ、実践する力をつける

  • Rでできそうなことを把握する
  • 困ったときの対処法・相談先を知る

これさえ押さえれば、個々の方法は覚えなくても大丈夫!

データ解析のおおまかな流れ

  1. コンピュータ環境の整備
  2. データの取得、読み込み
  3. 探索的データ解析
    • 前処理、加工 (地味。意外と重い)
    • 可視化、仮説生成 (派手!楽しい!) 👈 本日の主題
    • 統計解析、仮説検証 (みんな勉強したがる)
  4. 報告、発表
https://r4ds.had.co.nz/introduction.html

そもそもなぜ解析? 生の数字見ればよくない?

生データは情報が多すぎて関係性も何も見えない

print(ggplot2::diamonds)
      carat       cut color clarity depth table price     x     y     z
      <dbl>     <ord> <ord>   <ord> <dbl> <dbl> <int> <dbl> <dbl> <dbl>
    1  0.23     Ideal     E     SI2  61.5    55   326  3.95  3.98  2.43
    2  0.21   Premium     E     SI1  59.8    61   326  3.89  3.84  2.31
    3  0.23      Good     E     VS1  56.9    65   327  4.05  4.07  2.31
    4  0.29   Premium     I     VS2  62.4    58   334  4.20  4.23  2.63
   --                                                                  
53937  0.72      Good     D     SI1  63.1    55  2757  5.69  5.75  3.61
53938  0.70 Very Good     D     SI1  62.8    60  2757  5.66  5.68  3.56
53939  0.86   Premium     H     SI2  61.0    58  2757  6.15  6.12  3.74
53940  0.75     Ideal     D     SI2  62.2    55  2757  5.83  5.87  3.64

ダイヤモンド53,940個について10項目の値を持つデータセット

要約統計量(平均とか分散とか)を見てみる

各列の平均とか標準偏差とか:

   stat carat depth table    price     x     y     z
  <chr> <dbl> <dbl> <dbl>    <dbl> <dbl> <dbl> <dbl>
1  mean  0.80 61.75 57.46  3932.80  5.73  5.73  3.54
2    sd  0.47  1.43  2.23  3989.44  1.12  1.14  0.71
3   max  5.01 79.00 95.00 18823.00 10.74 58.90 31.80

大きさ carat と価格 price相関係数は 0.92 (かなり高い)。

生のままよりは把握しやすいかも。

しかし要注意…

平均値ばかり見て可視化を怠ると構造を見逃す

https://www.autodesk.com/research/publications/same-stats-different-graphs

作図してみると全体像・構造が見やすい

情報の整理 → 正しい解析・新しい発見・仮説生成

plot of chunk simplify-diamonds

carat が大きいほど price も高いらしい。
その度合いは clarity によって異なるらしい。

作図してみると全体像・構造が見やすい

情報の整理 → 正しい解析・新しい発見・仮説生成

https://r4ds.had.co.nz/explore-intro.html

可視化だいじ。わかった。
でも「データ分析に費やす労力の8割は前処理」だって?

機械処理しやすい形 vs 人が読み書きしやすい形

作図や解析に使えるデータ形式はほぼ決まってる
ggplot(data, ...), glm(..., data, ...), …
出発点となるデータはさまざま
実験ノート、フィールドノート、データベース、…

Happy families are all alike;
every unhappy family is unhappy in its own way
— Leo Tolstoy “Anna Karenina”

tidy datasets are all alike,
but every messy dataset is messy in its own way
— Hadley Wickham

整然データ tidy data   vs   雑然データ messy data

縦1列は1つの変数
横1行は1つの観測
1セルは1つの値
西原史暁「整然データとは何か」https://id.fnshr.info/2017/01/09/tidy-data-intro/

整然データ tidy data   vs   雑然データ messy data

縦1列は1つの変数
横1行は1つの観測
1セルは1つの値
西原史暁「整然データとは何か」https://id.fnshr.info/2017/01/09/tidy-data-intro/

整然データ tidy data   vs   雑然データ messy data

縦1列は1つの変数
横1行は1つの観測
1セルは1つの値
西原史暁「整然データとは何か」https://id.fnshr.info/2017/01/09/tidy-data-intro/

整然データ tidy data   vs   雑然データ messy data

縦1列は1つの変数
横1行は1つの観測
1セルは1つの値
西原史暁「整然データとは何か」https://id.fnshr.info/2017/01/09/tidy-data-intro/

整然データ tidy data

  • 縦1列は1つの変数
  • 横1行は1つの観測
  • 1セルは1つの
https://r4ds.had.co.nz/tidy-data.html
print(ggplot2::diamonds)
      carat       cut color clarity depth table price     x     y     z
      <dbl>     <ord> <ord>   <ord> <dbl> <dbl> <int> <dbl> <dbl> <dbl>
    1  0.23     Ideal     E     SI2  61.5    55   326  3.95  3.98  2.43
    2  0.21   Premium     E     SI1  59.8    61   326  3.89  3.84  2.31
    3  0.23      Good     E     VS1  56.9    65   327  4.05  4.07  2.31
    4  0.29   Premium     I     VS2  62.4    58   334  4.20  4.23  2.63
   --                                                                  
53937  0.72      Good     D     SI1  63.1    55  2757  5.69  5.75  3.61
53938  0.70 Very Good     D     SI1  62.8    60  2757  5.66  5.68  3.56
53939  0.86   Premium     H     SI2  61.0    58  2757  6.15  6.12  3.74
53940  0.75     Ideal     D     SI2  62.2    55  2757  5.83  5.87  3.64

整然データのご利益の例: ggplot2 (本日2時限目の話題)

x軸、y軸、色分け、パネル分けなどを列の名前で指定して簡単作図:

ggplot(diamonds) + aes(x = carat, y = price) +
  geom_point(mapping = aes(color = color, size = clarity)) +
  facet_wrap(~ cut)

plot of chunk tidy-data-benefit

本日1時限目の話題

なぜRを使うのか?

データ解析全体の流れ。可視化だいじ (詳細は本日後半)

作図・解析の前にデータの前処理が必要 (詳細は明日)

⬜ Rの基礎

  • R環境のセットアップ
  • Rとの対話
  • 「プロジェクト」と「スクリプト」を作る
  • 基本的な型と演算
  • Rパッケージ

Keyboard shortcuts

Action Mac Windows
Switch apps commandtab alttab
Quit apps commandq altF4
Spotlight commandspace
Cut, Copy, Paste commandx, -c, -v ctrlx, -c, -v
Select all commanda ctrla
Undo commandz ctrlz
Find commandf ctrlf
Save commands ctrls

See https://support.apple.com/HT201236

R環境のセットアップ

R本体
コマンドを解釈して実行するコア部分。
よく使われる関数なども標準パッケージとして同梱。
RStudio Desktop
Rをより快適に使うための総合開発環境 (IDE)
必須じゃないけど便利なので結構みんな使ってる。

RStudioを起動してConsoleで対話しよう

Workspace (Environment) = 一時オブジェクトの集まり

毎回まっさらなワークスペースで始める設定

RStudio → Preferences   command,
Tools → Global options

“Restore …” のチェックを外して、 “Save …” のNeverを選択

https://r4ds.had.co.nz/workflow-projects.html

“Project” を新規作成する

File → New Project… → New Directory → New Project →
→ Directory name: r-training-2021
→ as subdirectory of: ~/project (無ければ作る)

📁 ディレクトリ = フォルダ

Rスクリプトに書いてから実行

File → New File → R script

Rスクリプトに書いてから実行

File → New File → R script

Rスクリプトに書いてから実行

Select text with shift
Execute them with ctrlreturn

Rスクリプトを保存する

  • 手順
    • File → Save commands
    • ファイル名: hello.R
    • 場所: さっき作ったプロジェクト内 (デフォルトでそうなるはず)
  • スクリプトを書いたら消さずに保存すること!
    • 書いたスクリプトは財産
    • 保存しておけばまた使い回せる

🔰 いろんな四則演算を試して hello.R に保存してみよう。
e.g., 1 + 2 + 3, 3 * 7 * 2, 4 / 2, 4 / 3, etc.

プロジェクト📁にファイルが溜まっていく

スクリプト、データ、結果を分けて整理する例:

r-training-2021/           # プロジェクトの最上階
├── r-training-2021.Rproj  # これダブルクリックでRStudioを起動
├── hello.R
├── transform.R            # データ整理・変形のスクリプト
├── visualize.R            # 作図のスクリプト
├── data/                  # 元データを置くところ
│   ├── iris.tsv
│   └── diamonds.xlsx
└── output/                # 結果の出力先
    ├── iris-petal.png
    └── iris-summary.tsv

プロジェクト最上階を作業ディレクトリとし、
ファイル読み書きの基準にする。(後で詳しく)

ほんの一例です。好きな構造に決めてください。

Rと接する上での心構え

エラー文を恐れない
熟練プログラマでも頻繁にエラーを起こす。
エラーはRからのメッセージ。意図を読み取って修正しよう。
プログラミングの経験値 ≈ エラー解決の経験値
困ったらウェブ検索
あなたの問題は全世界のRユーザーが既に通った道。
日本語で、英語で、エラー文そのもので検索すれば解決策に当たる。

この実習の取り組み方

とにかく手を動かして体感しよう!

  1. こういう枠が出てきたら、自分のRスクリプトにコピペして保存:

    head(iris)
    
  2. 実行してコンソールを確認。思ったとおりの出力?
    ErrorWarning があったらよく読んで対処する。
    (無視していい Warning もたまーにあるけど)

  3. 🔰 マークの練習問題があれば解いてみる。
    そこまでのコードのコピペ+改変でできるはず。

疑問・困りごとがある場合は気軽にChat欄に書き込んでください。
私の代わりに解答するのも大歓迎です助かります。

変数/オブジェクトを作ってみよう

x = 2        # Create x
x            # What's in x?
[1] 2
y = 5        # Create y
y            # What's in y?
[1] 5

Rでは代入演算子として矢印 <- も使えるけど私は = 推奨。
# 記号より右はRに無視される。コメントを書くのに便利。

x + y
[1] 7

🔰 xy の引き算、掛け算、割り算をやってみよう

基本的な演算

+ とか * のような演算子(operator)を変数の間に置く。

10 + 3    # addition
10 - 3    # subtraction
10 * 3    # multiplication
10 / 3    # division
10 %/% 3  # integer division
10 %% 3   # modulus 剰余
10 ** 3   # exponent 10^3

🔰 コピペして結果を確認してみよう。

関数 (function)

変数を受け取って、何か仕事して、返す命令セット

x = seq(1, 3)  # 1と3を渡すとvectorが返ってくる
x
[1] 1 2 3
sum(x)         # vectorを渡すと足し算が返ってくる
[1] 6
square = function(something) {  # 自分の関数を定義
  something ** 2
}
square(x)                       # 使ってみる
[1] 1 4 9

🔰 自分の関数を何か作ってみよう。 e.g., 2倍にする関数 twice

変数/オブジェクトを作ってみよう Part 2

x = 42       # Create x
x            # What's in x?
[1] 42
y = "24601"  # Create y
y            # What's in y?
[1] "24601"

この xy を足そうとするとエラーになる。なぜ?

x + y        # Error! Why?
Error in x + y: non-numeric argument to binary operator

変数/オブジェクトの型

class(x)
[1] "numeric"
is.numeric(x)
[1] TRUE
is.character(x)
[1] FALSE
as.character(x)
[1] "42"

🔰 さっき作った y にも同じ関数を適用してみよう。

変数/オブジェクトの型

  • vector: 基本型。一次元の配列。
    • logical: 論理値 (TRUE or FALSE)
    • numeric: 数値 (整数 42L or 実数 3.1416)
    • character: 文字列 ("a string")
    • factor: 因子 (文字列っぽいけど微妙に違う)
  • array: 多次元配列。vector同様、全要素が同じ型。
    • matrix: 行列 = 二次元の配列。
  • list: 異なる型でも詰め込める太っ腹ベクトル。
  • data.frame: 同じ長さのベクトルを並べた長方形のテーブル。重要。
    tibble とか tbl_df と呼ばれる亜種もあるけどほぼ同じ。

vector: 一次元の配列

1個の値でもベクトル扱い。
同じ長さ(または長さ1)の相手との計算が得意。

x = c(1, 2, 9)  # 長さ3の数値ベクトル
x + x           # 同じ長さ同士の計算
[1]  2  4 18
y = 10          # 長さ1の数値ベクトル
x + y           # 長さ3 + 長さ1 = 長さ3 (それぞれ足し算)
[1] 11 12 19
x < 5           # 5より小さいか
[1]  TRUE  TRUE FALSE

🔰 この x, y を使っていろいろな演算を試してみよう

vectorから部分的に抜き出す

[] を使う。番号は1から始まる。

letters
 [1] "a" "b" "c" "d" "e" "f" "g" "h" "i" "j" "k" "l" "m" "n" "o" "p" "q" "r" "s" "t" "u" "v" "w" "x" "y" "z"
letters[3]
[1] "c"
letters[seq(4, 6)]       # 4 5 6
[1] "d" "e" "f"
letters[seq(1, 26) < 4]  # TRUE TRUE TRUE FALSE FALSE ...
[1] "a" "b" "c"

vectorを渡した結果は関数によって異なる

各要素に適用するもの:

x = c(1, 2, 9)
y = sqrt(x)     # square root
y
[1] 1.000000 1.414214 3.000000

全要素を集約した値を返すもの:

z = sum(x)
z
[1] 12

🔰 log(), exp(), length(), max(), mean() にvectorを渡してみよう。

matrix: 二次元の配列 (行列)

1本のvectorを折り曲げて長方形にしたもの。
中身は全て同じ型。機械学習とか画像処理とかで使う。

v = seq(1, 8)              # c(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)
x = matrix(v, nrow = 2)    # 2行に畳む。列ごとに詰める
x
     [,1] [,2] [,3] [,4]
[1,]    1    3    5    7
[2,]    2    4    6    8
y = matrix(v, nrow = 2, byrow = TRUE)  # 行ごとに詰める
y
     [,1] [,2] [,3] [,4]
[1,]    1    2    3    4
[2,]    5    6    7    8

🔰 結果を確認してみよう: x + y, dim(x), nrow(x), ncol(x).

行 (row), 列 (column) の憶え方

data.frame: 長方形のテーブル (重要!)

同じ長さの列vectorを複数束ねた長方形の表。
e.g., 長さ150の数値ベクトル4本と因子ベクトル1本:

print(iris)
    Sepal.Length Sepal.Width Petal.Length Petal.Width   Species
           <dbl>       <dbl>        <dbl>       <dbl>     <fct>
  1          5.1         3.5          1.4         0.2    setosa
  2          4.9         3.0          1.4         0.2    setosa
  3          4.7         3.2          1.3         0.2    setosa
  4          4.6         3.1          1.5         0.2    setosa
 --                                                            
147          6.3         2.5          5.0         1.9 virginica
148          6.5         3.0          5.2         2.0 virginica
149          6.2         3.4          5.4         2.3 virginica
150          5.9         3.0          5.1         1.8 virginica

iris はアヤメ属3種150個体に関する測定データ。
Rに最初から入ってて、例としてよく使われる。

data.frameを眺める

概要を掴む:

head(iris, 6)   # 先頭だけ見てみる。末尾は tail()
nrow(iris)      # 行数: Number of ROWs
ncol(iris)      # 列数: Number of COLumns
names(iris)     # 列名
summary(iris)   # 要約
View(iris)      # RStudioで閲覧
str(iris)       # 構造が分かる形で表示
tibble [150 × 5] (S3: tbl_df/tbl/data.frame)
 $ Sepal.Length: num [1:150] 5.1 4.9 4.7 4.6 5 5.4 4.6 5 4.4 4.9 ...
 $ Sepal.Width : num [1:150] 3.5 3 3.2 3.1 3.6 3.9 3.4 3.4 2.9 3.1 ...
 $ Petal.Length: num [1:150] 1.4 1.4 1.3 1.5 1.4 1.7 1.4 1.5 1.4 1.5 ...
 $ Petal.Width : num [1:150] 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.4 0.3 0.2 0.2 0.1 ...
 $ Species     : Factor w/ 3 levels "setosa","versicolor",..: 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 ...

🔰 ほかのデータもいろいろ見てみよう。 e.g., mtcars, quakes, data()

data.frameを眺める

部分的なdata.frameを取得する:

iris[2, ]                  # 2行目
iris[2:5, ]                # 2行目から5行目まで
iris[, 3:4]                # 3-4列目
iris[2:5, 3:4]             # 2-5行目, 3-4列目

vectorとして取得する:

iris[[3]]                  # 3列目
iris$Petal.Length          # Petal.Length列
iris[["Petal.Length"]]     # Petal.Length列
iris[["Petal.Length"]][2]  # Petal.Length列の2番目

結果がdata.frameになるかvectorになるか微妙:

iris[, 3]                  # 3列目
iris[, "Petal.Length"]     # Petal.Length列
iris[2, 3]                 # 2行目3列目
iris[2, "Petal.Length"]    # 2行目Petal.Length列

data.frameの新規作成

同じ長さの 列(column) vector を結合して作る:

x = c(1, 2, 3)
y = c("A", "B", "C")
mydata = data.frame(x, y)
print(mydata)
  x y
1 1 A
2 2 B
3 3 C

🔰 次のようなdata.frameを作って theDF と名付けよう:

 i s
24 x
25 y
26 z

ヒント: c() 無しでクリアすることも可能。

data.frameの読み書き

  • readxlパッケージを使えば .xlsx ファイルも読める、けど

  • カンマ区切り(CSV)とかタブ区切り(TSV)のテキストが無難。

  • ファイル名は作業ディレクトリからの相対パスで指定。

    install.packages("readr") # R標準の read.table() とかは難しいので
    library(readr)            # パッケージのやつを使うよ
    write_tsv(iris, "data/iris.tsv")   # 書き出し
    iris2 = read_tsv("data/iris.tsv")  # 読み込み
    
  • 現在の作業ディレクトリとその中身を確認しておこう:

    getwd()               # Get Working Directory
    list.files(".")       # List files in "."
    list.files("data")    # List files in "./data"
    

🔰 R組み込みデータや自作データを読み書きしてみよう

R package

便利な関数やデータセットなどをひとまとめにしたもの。

Standard Packages
Rの標準機能。何もしなくても使用可能
Contributed Packages
有志により開発され、 CRAN にまとめて公開されている。
要インストール。使う前に読み込むおまじないが必要。
install.packages("readr")  # 一度やればOK
library(readr)             # 読み込みはRを起動するたびに必要
update.packages()          # たまには更新しよう
素のRも覚えきってないのにいきなりパッケージ?
大丈夫。誰も覚えきってない。
パッケージを使わないR作業 = 火もナイフも使わない料理

tidyverse

Rでデータを上手に扱うためのパッケージ群

install.packages("tidyverse")
library(tidyverse)
# 関連パッケージが一挙に読み込まれる
  • 統一的な使い勝手
  • 暗黙の処理をなるべくしない安全設計
  • シンプルな関数を繋げて使うデザイン
https://r4ds.had.co.nz/introduction.html

tidyverse

Rでデータを上手に扱うためのパッケージ群

install.packages("tidyverse")
library(tidyverse)
# 関連パッケージが一挙に読み込まれる
  • Conflicts ❌ とか表示されて不安だけど
    これは大丈夫なやつ:
── Attaching packages ─────────────────────────────────────── tidyverse 1.3.1 ──
✔ ggplot2 3.3.5     ✔ purrr   0.3.4
✔ tibble  3.1.4     ✔ dplyr   1.0.7
✔ tidyr   1.1.3     ✔ stringr 1.4.0
✔ readr   2.0.1     ✔ forcats 0.5.1
── Conflicts ────────────────────────────────────────── tidyverse_conflicts() ──
✖ dplyr::filter() masks stats::filter()
✖ dplyr::lag()    masks stats::lag()

次回からはこれらを使って解説

疑問やエラーの解決方法

  • エラーのほとんどは凡ミス由来。よく確認しよう。
  • エラー文やパッケージ名をコピペしてウェブ検索
    StackOverflow や個人サイトに解決策
  • Slack r-wakalang で質問を投稿する。
    (質問に飢えた優しいワニが多数生息 👀   👀   👀   👀)
  • 状況再現できる小さな例 (reprex) を添えると回答を得やすい。
    (これを準備してるうちに問題が切り分けられて自己解決したり)
  • パッケージの公式ドキュメントをちゃんと読む
  • R(Studio)内のヘルプを読む: ?sum, help.start()

本日1時限目の話題

✅ なぜRを使うのか?

✅ データ解析全体の流れ。可視化だいじ (詳細は本日後半)

✅ 作図・解析の前にデータの前処理が必要 (詳細は明日)

✅ Rの基礎

  • まずRスクリプトに書いてから、コンソールで実行
  • 変数には型がある: 数値、文字列、データフレームなど
  • 便利なパッケージを使おう
  • 調べ方さえわかれば、全部覚えなくても大丈夫。

Reference

R for Data Science — Hadley Wickham and Garrett Grolemund
https://r4ds.had.co.nz/
Book
日本語版書籍(Rではじめるデータサイエンス)
Older versions
Rにやらせて楽しよう — データの可視化と下ごしらえ」 岩嵜航 2018
「Rを用いたデータ解析の基礎と応用」石川由希 2019 名古屋大学
Rによるデータ前処理実習」 岩嵜航 2020 東京医科歯科大
Rを用いたデータ解析の基礎と応用」 石川由希 2021 名古屋大学